2023年6月に償還した投資信託―19本中10本が運用期間途中での繰上償還

6月は19本の追加型株式投資信託が償還、このうち10本が繰上償還
投資信託協会によると、2023年6月に19本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。償還とは投資信託が運用を終了することをいいます。なお、このうち2本は東京証券取引所に上場していたETFの「JPX日経400ブル2倍上場投信(レバレッジ)(銘柄コード:1467)」と「JPX日経400ベア上場投信(銘柄コード:1468)」でした。
償還を迎えた19本のファンドのうち満期償還(定時償還)は9本だけで、残りの10本は、ファンドが設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用の途中で信託期間を繰り上げて償還されました。
繰上償還の理由
繰上償還された2本のETFについては、受益権口数が20営業日連続して10万口を下回り、約款に定める解約事由に該当することになったために繰上償還されました。この2本のETFは6月11日に上場廃止となり、6月13日に償還されています。
また6本は、受益者が1名であり、その受益者が全口数を換金したい意向があるためという理由で繰上償還されました。2本は残高が減少し、信託約款の繰上償還条項に定める金額を下回り、効率的な運用を行うことが困難な状況が続いていることが理由でした。引き続き残高の減少が繰上償還の最も多い理由となっています。
繰上償還の影響
投資家にとって投資信託の繰上償還は投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、その時点で評価損失があれば、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるをえません。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
これにより、投資家は運用計画を見直さざるをえなくなります。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまうわけです。
多くのファンドが繰上償還される現状を鑑みると、ファンドの選択には十分な注意が必要です。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することがとても大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託(5482本)の1本当たりの平均残高は約179億円です(2023年6月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は377本(2023年5月末現在)運用されています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択した方がよいでしょう。
1口当たり償還額
2023年6月に償還した投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、ETFを除いた17本中11本は設定時の基準価額である10,000円を下回る金額で償還しました。
1口当り償還額が最も低かったのは、大和アセットマネジメント株式会社の「ダイワ日本株ストラテジーα(通貨選択型) -ジャパン・トリプルリターンズ- 通貨セレクト・コース(毎月分配型)」で1口当り償還額は2,624.46円でした。
一方で、1口当り償還額が最も高かったのは、明治安田アセットマネジメント株式会社の「明治安田日本株バリューアップ・セレクト100」で、1口当り償還額は24,512.31円でした。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンド(除くETF)が5本ありました。
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額が最も低かったのは、大和アセットマネジメント株式会社の「マクロテーマ・ロング・ショート・ファンド」で、合計額は7,553.69円(1口当り償還額7,553.69円+分配金0円)でした。
一方、この合計額が最も高かったのは、「明治安田日本株バリューアップ・セレクト100」で、合計額は27,292.31円(1口当り償還額24,512.31円+分配金2,780円)でした。
2023年6月に償還した追加型株式投資信託の一覧
運用会社 | ファンド名 | 設定日 | 償還時純資産 総額 (百万円) |
1口当り 償還額 (A) (円) |
期中 分配金 (B) (円) |
合計 (A) + (B) (円) |
満期/繰上 |
日興 | ノーロード・シンガポール高配当株式フォーカス(毎月) | 2013.6.28 | 143 | 8,952.16 | 6,390.00 | 15,342.16 | 満期 |
日興 | ノーロードJリート・フォーカス(毎月) | 2013.7.1 | 155 | 8,822.71 | 8,050.00 | 16,872.71 | 満期 |
大和 | ダイワ日本株ストラテジーα(通貨選択型) -ジャパン・トリプルリターンズ- 日本円(毎月) | 2013.6.19 | 1,094 | 6,940.03 | 7,080.00 | 14,020.03 | 満期 |
大和 | ダイワ日本株ストラテジーα(通貨選択型) -ジャパン・トリプルリターンズ- 豪ドル(毎月) | 2013.6.19 | 241 | 4,965.52 | 7,910.00 | 12,875.52 | 満期 |
大和 | ダイワ日本株ストラテジーα(通貨選択型) -ジャパン・トリプルリターンズ- ブラジル・レアル(毎月) | 2013.6.19 | 1,225 | 3,049.02 | 9,250.00 | 12,299.02 | 満期 |
大和 | ダイワ日本株ストラテジーα(通貨選択型) -ジャパン・トリプルリターンズ- 米ドル(毎月) | 2013.6.19 | 1,543 | 11,497.39 | 7,080.00 | 18,577.39 | 満期 |
大和 | ダイワ日本株ストラテジーα(通貨選択型) -ジャパン・トリプルリターンズ- 通貨セレクト(毎月) | 2013.6.19 | 1,239 | 2,624.46 | 8,370.00 | 10,994.46 | 満期 |
大和 | ジャパン・アクティブ・ボンド・オープン | 2019.11.18 | 1 | 9,656.67 | 0.00 | 9,656.67 | 繰上 |
大和 | NWQグローバル厳選証券ファンド(為替ヘッジあり/毎月) | 2020.2.12 | 1 | 8,478.55 | 0.00 | 8,478.55 | 繰上 |
大和 | NWQグローバル厳選証券ファンド(為替ヘッジなし/毎月) | 2020.2.12 | 1 | 11,571.58 | 0.00 | 11,571.58 | 繰上 |
大和 | ワールド・アクティブ・ボンド・オープン(為替ヘッジあり) | 2019.11.5 | 1 | 8,504.72 | 0.00 | 8,504.72 | 繰上 |
大和 | 日亜厳選ロング・ショート・ファンド | 2021.4.12 | 77 | 7,721.16 | 0.00 | 7,721.16 | 繰上 |
大和 | マクロテーマ・ロング・ショート・ファンド | 2021.4.12 | 76 | 7,553.69 | 0.00 | 7,553.69 | 繰上 |
明治安田 | 明治安田日本株バリューアップ・セレクト100 | 2000.7.26 | 788 | 24,512.31 | 2,780.00 | 27,292.31 | 繰上 |
インベスコ | インベスコ 米国ハイ・イールド債券ファンド(毎月) | 2016.7.1 | 37 | 10,855.55 | 3,060.00 | 13,915.55 | 繰上 |
One | DIAMシェール株ファンド | 2013.6.13 | 632 | 12,188.34 | 3,000.00 | 15,188.34 | 満期 |
アムンディ | アムンディ・中東株式ファンド | 2008.6.19 | 1,571 | 13,415.19 | 0.00 | 13,415.19 | 満期 |
シンプレクス | JPX日経400ブル2倍上場投信(レバレッジ) | 2015.8.21 | 127 | 18,637.45 | 0.00 | 18,637.45 | 繰上 |
シンプレクス | JPX日経400ベア上場投信 | 2015.8.21 | 24 | 3,415.71 | 0.00 | 3,415.71 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)