
ブラックロック・ジャパンは2025年9月10日、東京証券取引所において新規上場した 「iシェアーズ AI グローバル・イノベーション アクティブETF(愛称:ベストAI)」(銘柄コード:408A) の発表会を開催した。ベストAIは、全世界のテクノロジー系企業から厳選した40銘柄前後に集中投資する東証上場初のグローバル株アクティブETF。
→「アクティブ運用型ETFとは?」(投信まるごとQ&A)
講演に登壇したファンドマネージャー、トニー・キム氏は、AIをめぐる投資機会と産業構造の変化、そして日本市場の重要性について語った。
「インテリジェンス革命」という質的転換
キム氏はまず、AIを「PC、インターネット、モバイル、クラウドに続く基盤技術」と位置づけた。従来の効率化を主眼とした技術革新とは異なり、AIは「機械に知能そのものを付与する」という質的な転換点であり、社会、生活、労働、ソフトウェア全般に深甚な影響を与えると指摘した。
その上で、AI時代における新しい価値の尺度を「インテリジェンストークン」と表現。20世紀における「電力」「石油」「金」に匹敵する生産性指標になると強調した。
投資資金の急拡大と「AIファクトリー」
現在のAIブームは始まってから約2年半。キム氏によれば、2025年の1年間だけで約0.5兆ドルがAI関連に投資されており、数年以内には「年間1兆ドル超」、世界GDPの1%規模に拡大する見込みだという。
その資金は、計算資源・半導体・ロボティクス・エネルギーといった「AIファクトリー」構築に向けられる。特にチップ、ロボティクス、電力供給の融合が今後の成長のカギになるとした。
投資環境の急変とアクティブ運用の必要性
AIの進展スピードについては「1カ月が1年に相当するほど」と表現。既存の安全銘柄が相対的にリスク資産化する可能性がある一方、新興企業の台頭が加速するとも語った。こうした高速の環境変化に対応するためには「アクティブ運用こそ有効」と強調した。
日本市場の強みと「革新回帰」
ベストAIを東京市場に上場した理由について、キム氏は「半導体、ロボティクス、精密機器、原子力・電力といった領域に日本は歴史的な強みを持つ」と説明。1980年代の日本のイノベーションを引き合いに出し、今回の上場を「革新回帰の象徴」と位置づけた。
ベストAIの狙いと運用方針
新ETFの目的は、日本の投資家にAI関連の巨大な成長機会へのアクセスを提供することだ。ポートフォリオはアクティブ運用により随時見直され、半導体、ロボティクス、エネルギーといったコア領域を中心に構成される。
ただし、AGI(汎用人工知能)やASI(超知能)の不確実性、サプライチェーンの制約、過熱気味のバリュエーションなどリスク要因も指摘。投資家は十分な理解をもって参加する必要があると釘を刺した。
「AIの未来」を語る白熱の対談
キム氏の基調講演に続いて、「AIの未来」と題したパネルディスカッションが行われた。登壇したのは、キム氏に加えて、アドバンテスト代表取締役兼社長の津久井幸一氏、Sakana AI共同創業者兼CEOのデビッド・ハ氏、そして自由民主党衆議院議員の小林史明氏。
半導体テスト技術の最前線、生成AI研究の革新、日本の政策と社会実装——それぞれの視点からAIの可能性と課題が語られ、投資家だけでなく産業界・政策立案者を巻き込んだ未来展望が披露された。多様な立場からの議論は、日本がAI時代にどのような役割を果たすかを浮き彫りにするものとなり、会場は熱気に包まれた。