2021年6月に償還した投資信託―33本中18本が運用期間途中での繰上償還

6月は33本の追加型株式投資信託が償還、このうち18本が繰上償還
投資信託協会によると、2021年6月に33本の追加型の株式投資信託が償還を迎えました。
この33本のうち半数以上となる18本のファンドは、設定された時点で定められていた信託期間(運用期間)を満了せずに、運用期間の途中で信託期間を繰り上げて償還されたものでした。12本は満期償還、残りの3本は、ファンドの基準価額が一定の額に到達した場合に繰上償還を実施するという条件を満たしての償還でした。
繰上償還の理由
2021年6月に繰上償還されたファンド18本の繰上償還の理由を見ると、残高の減少により当初定めた運用方針に則った運用を継続することが困難になったことを理由に償還されたファンドが14本、受益者から自己の有する受益権の全部について解約を行いたい旨の申し出があったためという理由が3本、残り1本はあいグローバル・アセット・マネジメントが運用していた「あい・パワーファンド」で、同ファンドは、金融庁による行政処分を受けて繰上償還されました。
あい・パワーファンドは、2019年4月23日に設定され、主として先進国通貨の外国為替証拠取引に実質的に投資することにより安定的な収益の確保および信託財産の中長期的な成長を目指して運用を行なうとされていました。しかし、2021年4月2日付の金融庁による行政処分において、同ファンドが主に投資を行っているケイマン籍ファンドの運用・管理の実態の把握が不十分であったことから、業務停止命令として、ファンドに係る運用の停止(3か月)、及び業務改善命令として、投資先ファンドの運用・管理の実態が把握できていない状況が継続しているため、受益者保護の観点から、受益者間の公平に配慮の上、運用を停止する期間において速やかな償還その他顧客資産の保全のために必要な手続きをとることを命じられました。これを受け、同ファンドは2021年6月9日に繰上償還されました。
繰上償還の影響
投資信託の繰上償還は、投資家にとっては投資リスクの一つです。
保有している投資信託が繰上償還になった場合、償還時に評価損失が生じていた場合、償還時点で投資家の損失は確定されることになります。基準価額が回復することを期待して保有していた投資家も損失を確定し、現金化せざるを得なくなります。一方、償還時に利益が出ていた場合は、利益を確定して通常は税金を支払うことになります。
さらに、繰上償還が投資家にとって大きな問題となるのは、資産計画を見直さざるをえなくなるということです。時間をかけて選んだ投資信託が、想定していた運用期間途中で運用終了されてしまうため、老後や子供の教育資金を目的とした資金計画をやり直す必要が生じてしまいます。
この繰上償還リスクを回避するためには、投資信託を購入する前に、次の点を確認することが大切です。
- 運用残高(純資産総額)が十分大きいこと
- 運用残高が減少傾向にないこと
なお、投資信託協会のデータによると、ETFを除いた追加型株式投資信託の1本当たりの平均残高は約145億円です(2021年6月末現在)。一方で、純資産総額(残高)が500億円を超える投資信託は322本(2021年6月末現在)存在しています。少なくとも残高が平均以上あり、その残高が増加傾向にある投資信託を選択すべきです。
1口当たり償還額
2021年6月に償還したファンドのうち、上場投資信託の「NEXT FUNDS JPX日経400レバレッジ・インデックス連動型上場投信」を除く32本の投資信託の1口当り償還額(A)を見ると、設定時の基準価額である10,000円を上回る金額で償還したのは18本だけでした。
1口当り償還額が最も高かったのは、野村アセットマネジメント株式会社の「ノムラ日本株戦略ファンド(野村SMA向け)」で、1口当り償還額は18,458.75円でした。同ファンドは、全受益権口数の解約の申込みがあったため繰上償還されました。
一方で、1口当り償還額が最も低かったのは、アセットマネジメントOne株式会社の「新光トルコ・リラ債券ファンド(毎月決算型)」で、1口当り償還額は1,600.29円でした。同ファンドも、残高の減少を理由に繰上償還されました。
1口当たり償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額
1口当り償還額と運用期間中に投資家に支払われた分配金の合計額(トータル・リターン)で見ると、この合計額(A+B)が10,000円を下回ったファンドが9本ありました。つまり、これら9本のファンドを設定時に購入し、償還まで保有した人のトータル・リターンはマイナス(損失)だったことになります。
1口当り償還額と期中分配金の合計額が最も高かったのは、野村アセットマネジメントの「野村アジアREITファンド(毎月分配型)」で、合計額は29,255.24円(1口当り償還額16,625.24円+分配金12,630円)でした。
一方、1口当たり償還額と期中分配金の合計額が最も低かったのは、大和アセットマネジメント株式会社の「ベア2倍日本株ポートフォリオ5」で、合計額は3,308.1円(1口当たり償還額3,308.1円+分配金0円)でした。
運用期間
2021年6月に償還した投資信託の運用期間を見ると、運用期間が最も長かったのは、1997年12月に設定された「GS・日本株ファンド(愛称:牛若丸)」でした。同ファンドも、残高減少を理由に繰上償還されました。
投資信託の信託期間は5年、10年というものから無期限のものまであります。老後資金の確保のように長い期間をかけた資産形成を目的としている場合は、より長期での運用が可能な信託期間が「無期限」とされているものを選択する方が良いでしょう。実際に、確定拠出年金用の投資信託の信託期間は全て無期限となっていますし、つみたてNISAの対象ファンドは無期限または20年以上とされています。
【2021年6月に償還した追加型株式投資信託】
運用会社 | ファンド名 | 償還日 | 償還時純資産総額(百万円) | 償還時1口当たり償還額(A) | 期中分配金(円)(B) | 合計(A)+(B)(円) | 満期・繰上 |
野村 | ノムラ日本株戦略ファンド(野村SMA向け) | 17日 | 2 | 18,458.75 | 45.00 | 18,503.75 | 繰上 |
野村 | 野村アジアREITファンド(毎月分配型) | 22日 | 444 | 16,625.24 | 12,630.00 | 29,255.24 | 満期 |
野村 | 野村新興国高配当株トリプルウイング ブラジルレアル毎月分配型 | 28日 | 450 | 2,488.87 | 4,390.00 | 6,878.87 | 繰上 |
野村 | NEXT FUNDS JPX日経400レバレッジ・インデックス連動型上場投信 | 30日 | 264 | 2,976,711.34 | 0.00 | 2,976,711.34 | 繰上 |
日興 | 時間分散型バランスファンド(成長指向)2016-11 | 16日 | 163 | 13,009.23 | 0.00 | 13,009.23 | 条件 |
日興 | 時間分散型バランスファンド(成長指向)2016-08 | 22日 | 136 | 13,018.26 | 0.00 | 13,018.26 | 条件 |
大和 | ダイワ/アムンディ食糧増産関連ファンド | 11日 | 776 | 16,057.40 | 3,800.00 | 19,857.40 | 満期 |
大和 | iFreeNEXT 日本小型株インデックス | 11日 | 568 | 10,717.54 | 0.00 | 10,717.54 | 繰上 |
大和 | ブルベア・マネー・ポートフォリオ5 | 28日 | 2,109 | 9,985.53 | 0.00 | 9,985.53 | 満期 |
大和 | ブル3倍日本株ポートフォリオ5 | 28日 | 721 | 17,463.58 | 0.00 | 17,463.58 | 満期 |
大和 | ベア2倍日本株ポートフォリオ5 | 28日 | 231 | 3,308.10 | 0.00 | 3,308.10 | 満期 |
大和 | 『しがぎん』SRI三資産バランス・オープン(奇数月分配型) | 30日 | 54 | 10,757.77 | 3,120.00 | 13,877.77 | 繰上 |
岡三 | 日本インバウンドオープン | 10日 | 402 | 13,230.97 | 0.00 | 13,230.97 | 満期 |
岡三 | 水戸証券アジア・オセアニア債券オープン(寄附付) | 18日 | 1,060 | 4,859.26 | 7,620.00 | 12,479.26 | 満期 |
岡三 | 日本株テーマセレクション | 28日 | 599 | 14,804.85 | 300.00 | 15,104.85 | 繰上 |
T&D | T&D日本株ファンド(通貨選択型)円建てコース | 25日 | 67 | 11,909.80 | 6,500.00 | 18,409.80 | 満期 |
T&D | T&D日本株ファンド(通貨選択型)米ドル建てコース | 25日 | 374 | 11,727.57 | 7,950.00 | 19,677.57 | 満期 |
T&D | T&D日本株ファンド(通貨選択型)マネープールコース | 25日 | 0 | 9,996.10 | 0.00 | 9,996.10 | 満期 |
JPモルガン | JPMグロ-バル高利回りCBファンド(限定追加型・早期償還条項付)2018-02 | 4日 | 2,901 | 11,500.30 | 0.00 | 11,500.30 | 条件 |
ニッセイ | ニッセイ/パトナム・バランスアップオープン | 28日 | 378 | 10,461.09 | 5,020.00 | 15,481.09 | 繰上 |
ゴールドマン株式会社 | GS・日本株ファンド | 7日 | 1,448 | 15,041.17 | 2,955.00 | 17,996.17 | 繰上 |
One | 新光トルコ・リラ債券ファンド(毎月決算型) | 7日 | 120 | 1,600.29 | 4,685.00 | 6,285.29 | 繰上 |
One | 新光メキシコ・ペソ債券ファンド(毎月決算型) | 7日 | 196 | 6,446.21 | 4,950.00 | 11,396.21 | 繰上 |
One | 日本実力株ファンド | 21日 | 649 | 13,720.17 | 2,740.00 | 16,460.17 | 繰上 |
東京海上 | 東京海上・スタイルアルファ・グローバルマクロファンド | 18日 | 339 | 6,777.71 | 0.00 | 6,777.71 | 繰上 |
東京海上 | 東京海上・スタイルアルファ・グローバル債券ファンド | 18日 | 347 | 6,939.40 | 0.00 | 6,939.40 | 繰上 |
UBS | UBS地方銀行株ファンド | 21日 | 1,157 | 5,355.58 | 6,500.00 | 11,855.58 | 満期 |
三井住友トラスト | アセアン株式ファンド | 15日 | 819 | 10,974.27 | 2,520.00 | 13,494.27 | 満期 |
あいグローバル | あい・パワーファンド | 9日 | 6,795 | 10,609.67 | 0.00 | 10,609.67 | 繰上 |
三井住友DS | 三井住友・新興国債券トータルリターン・ファンド(為替ヘッジあり) | 8日 | 165 | 9,537.64 | 0.00 | 9,537.64 | 繰上 |
三井住友DS | 三井住友・新興国債券トータルリターン・ファンド(為替ヘッジなし) | 8日 | 617 | 9,933.44 | 0.00 | 9,933.44 | 繰上 |
三井住友DS | アジア・ハイイールド債券ファンド毎月分配型(通貨アクティブヘッジコース) | 28日 | 615 | 6,135.37 | 6,615.00 | 12,750.37 | 繰上 |
三井住友DS | アジア・ハイイールド債券ファンド毎月分配型(ヘッジなしコース) | 28日 | 15 | 7,509.54 | 4,270.00 | 11,779.54 | 繰上 |
(データ等出所:投資信託協会、EDINET、各ファンドの有価証券届出書・臨時報告書)