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日興アセットマネジメント、「国内株式議決権行使基準」を改定

日興アセットマネジメント株式会社は、国内投資先企業の株式議決権行使に関する「国内株式議決権行使基準」について改定したと2025年2月28日に発表した。

→「投資信託が保有する議決権はどうなっているの?」(投信まるごとQ&A)

日興アセットマネジメントでは、議決権行使指図に関する判断基準などを定めた「議決権等行使指図ガイドライン」および「国内株式議決権行使基準」に基づき、適切に議決権行使を実施している。「国内株式議決権行使基準」は、日興アセットマネジメントの国内株式議決権行使が「議決権等行使指図ガイドライン」に則って行われるよう、具体的基準を定めるもの。

改定の概要

今般の改定の概要は以下の通り。下記1から5までは2025年4月以降に適用する。ただし、下記6および7については投資先企業において対応に一定期間を要する可能性を考慮し、適用開始時期を2026年4月以降とする。

  1. 株主還元(剰余金処分):ROE水準の引き上げ
  2. 取締役選任(剰余金処分):ROE水準の引き上げ
  3. 取締役選任(サステナビリティ基準):気候変動ガバナンス体制の整備を追加
  4. 取締役選任(政策保有株に関する基準):救済措置方針の明記
  5. 買収防衛策:有事導入型の考え方を明記
    (以上の5項目については2025年4月以降に適用)
  6. 取締役選任(女性取締役に関する要件):TOPIX500企業への要件を引き上げ
  7. 取締役選任(業績基準):ROE水準の引き上げおよびPBR基準の導入
    (以上の2項目については2026年4月以降に適用。なお、今後2025年度中に他の基準にも改定を施した場合、その内容も2026年4月以降に同時に適用されることがある)

2025年4月以降に適用

1. 株主還元(剰余金処分)

1. 従来は、総還元性向30%未満、かつ、過去3期連続でROE8%未満の場合、再任取締役に反対としていたが、「総還元性向30%未満の場合は反対(ただし、過去3期のうち1期でもROE10%を超えている場合を除く)」とする。

2. 従来は、キャッシュリッチ企業について、総還元性向40%、かつ、過去3期連続でROE8%未満の場合、再任取締役に反対としていたが、「総還元性向50%未満の場合は反対(過去3期のうち1期でもROE10%を超えている場合は問わない)」とする。ただし、投資先企業とのエンゲージメントなどを通じて、投資計画などのキャッシュの活用方法が明確な場合は肯定的に判断する。

<背景>
1. 従来は、ROE8%を満たしている場合には株主還元の基準抵触の対象外としてきた。この基本的な考え方に変更はないが、期待されるROE水準が高まるなかで、総還元性向が30%を下回るケースを許容するには、より高いROEの水準を実現していることが必要と判断した。
2. 企業が過度な現預金などを抱えている場合、インフレ局面では現金価値の目減りなど企業価値棄損のリスクが高まると判断し、基準となる総還元性向を引き上げることにした。ROE水準の引き上げについては上記1.と同様の理由。

2. 取締役選任(剰余金処分)

剰余金処分に関して、再任する取締役に求める基準を上記1.1.の水準まで引き上げる。

<背景>
上記1.1.<背景>と同様。

3. 取締役選任(サステナビリティ基準)

温室効果ガス排出量が相対的に上位の企業において、以下に示す気候変動対応への取り組みが不十分と判断される場合に経営トップに反対することにしているが、対象とする取り組みに「気候変動ガバナンス体制の整備」を追加する。
1) 気候変動ガバナンス体制の整備 (今回新規追加)
2) パリ協定に整合する中期・長期の排出量削減目標の設定
3) 目標実現に向けたロードマップ策定・実施
4) 上記項目を含むサステナビリティ/気候変動対応にかかる情報開示  

<背景>
従来から、パリ協定に整合する中期・長期の排出量削減目標の設定や目標実現に向けたロードマップの策定・実施などを求めているが、排出量削減の計画だけでなく、実行力の重要性が高まっていることに鑑み、実効性を担保する体制整備を追加した。

4. 取締役選任(政策保有株に関する基準)

従来は、政策保有株の残高が、連結純資産対比20%以上の場合(ただし、定量的な縮減目標や取り組み状況などを勘案)に経営トップに反対としているが、救済措置の基準として、具体的に「20%未満を目指す縮減目標の開示」を求める。なお、今後数年以内を目途に基準値の厳格化を検討する予定。

<背景>
資産効率の向上や議決権の空洞化などの課題解決に向けて、政策保有株式の縮減を加速させるために具体的な目標の開示を求めることにした。

5. 買収防衛策

事前警告型の買収防衛策については原則として反対とする方針に変更はないが、有事導入型の買収防衛策については、個別に賛否判断を行なう。

<背景>
事前警告型の買収防衛策は、潜在的な買収者への牽制となる場合や、経営者の保身のために利用されるおそれがあることなどから原則反対のスタンス。ただし、有事導入型の買収防衛策の事例が増加していることを踏まえ、今回明記することにした。

2026年4月以降に適用

6. 取締役選任(女性取締役に関する要件)

従来は、全市場の企業に対して女性取締役が不在の場合に経営トップに反対していたが、2026年4月以降は、TOPIX500企業は女性取締役が2名かつ15%未満(取締役構成比)の場合、TOPIX500以外の企業は不在の場合、経営トップに反対する。

<背景>
日興アセットマネジメントでは、取締役会における多様性確保は意思決定の質を上げていくための重要な要素であると考えている。2030年までに女性役員比率を30%以上とすることなどを求める政府方針も考慮し、段階的に人数などの要件を引き上げることを検討してきた。女性取締役候補者の数が逼迫しているとの見方もあるが、企業規模が比較的大きな企業には女性活躍のさらなる後押しを期待していることから、先行して基準改定の対象とすることにした。2026年4月以降の株主総会において適用する背景は、企業が有用な人材を登用するには時間がかかることを考慮し、十分な時間を確保することが必要と判断したため。

7. 取締役選任(業績基準)

従来は「過去3期連続ROE5%未満かつ業種(東証17業種区分)内下位50%に該当する場合、当該期間在任の取締役に反対する」という基準だったが、2026年4月以降は、「過去3期連続ROE8%未満かつ業種(東証17業種区分)内下位50%に該当する場合。なおPBR1倍を超えている場合は問わない」という基準に変更する。

<背景>
日興アセットマネジメントでは、投資先企業に対し資本コストを上回るROEの水準を期待している。これまでも企業との対話の場で資本コストを上回るROEの実現を促してきたが、議決権行使の判断でも一層後押しするため、ROE基準を8%に引き上げることとする。なお、PBR1倍を超えている場合は、ROEが資本コストを上回っているものとみなし賛成する。2026年4月以降の株主総会において適用する背景は、エンゲージメントなどにより投資先企業への周知に十分な時間が必要であると判断したため。

→「エンゲージメントとは?」(投信まるごとQ&A)

日興アセットマネジメントは、投資先企業との対話を積極的に行い、各企業の考え方、取り組みを理解し、行使判断に反映させたいと考えている。このような方針に基づき、対話を希望される企業向けの問い合わせ先窓口を設置している。

→日興アセットマネジメント「国内株式議決権行使基準」について 

日興アセットマネジメントは、「今後も、フィデューシャリーの原則に則り、投資家の皆様からお預かりした資産の中長期的な投資リターンの拡大を図るスチュワードシップ責任を果たしてまいります」と述べている。

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